筆子さんがKADOKAWAから「1週間で8割捨てる技術」という本を出版されました。
筆子さんは私が運営する風花塾の卒業生で、現在は風花塾で講師をつとめてくれています。その筆子さんの初書籍ということで、感情的に傾くのを警戒しながら本を開いた次第です。
正直、私は現在の出版業界に対し絶望に似た感情さえ抱いています。売らんかなの販売促進ばかりに注力していて、いわゆる「良書」がほとんど出版されないからです。
筆子さんの「1週間で8割捨ている技術」にしても、「断捨離」の根強い人気、そして最近の「ミニマリスト」ブームに当て込んだ出版であることは明らかです。
しかも、筆子さんは平均でおよそ1日10万ページビューを誇る「筆子ジャーナル」を運営する有名ブロガー。これなら、出版する前から売れることは計算できるわけで……。
そういう出版社のこざかしい戦略が透けて見えてしまい、愛のない編集をされていたら「真っすぐな人」である筆子さんが、むしろ気の毒である、そんな嫌な予感を覚えつつ、ページをめくってゆきました。
ところが、私の雑然とした不安は、本を読み終わった時、台風が去った後の美しい夜明けのように、消え去っていたのです。
筆子さんの「1週間で8割捨てる技術」の最大の魅力は、「誠実の書」であることだと言ったら、あなたは呆気にとられますか?
筆子さんには、本を売って儲けてやろうという欲は微塵もなく、誠実に読者に役立つノウハウだけを、まっすぐに語り切っているのです。
私自身「断捨離」や「ミニマリスト」には興味があるので、これまで、断捨離系、ミニマリスト系の本をけっこう読んできました。しかし、最後まで熟読できた書籍は一冊もありません。
その理由は、いろいろあるのですが、主に以下の2点により、私はそうした断捨離本に嫌悪感さえ覚えてきました。
断捨離本がつまらない2つの理由
1)ノウハウを本を売るためにマインドや人生観に無理やりつなげているとしか思えないほど、著者の人生哲学が浅薄であること。
2)読者受けを狙いすぎた狡猾な語り口が鼻につき、効果的な方法かもしれないノウハウさえも嘘っぽく感じてしまうこと。
しかし、筆子さんの「1週間で8割捨てる技術」は、筆子さんの人間性をほうふつとさせる「真っすぐな語り口」が小気味よく、読後、清涼感を覚えたほどでした。
台風一過、商業主義という汚濁が吹き飛ばされ、澄んだ光の粒が輝いている朝に似た静けさを、筆子さんの本から、あなたもぜひ感じ取っていただきたい。
筆子さんのブログの文体は非常に濃いのです。筆子さんのブログはこちら⇒筆子ジャーナル
しかし、書籍の文体は編集者が読みやすさを重視したせいか、スリム化されています。一読した時、読者は拍子抜けするかもしれません。他の断捨離系の著者のような狡賢いサービス精神がないからです。
実は、この拍子抜けするほどの「愚直さ」こそ、筆子さんの本、そして筆子さん自身の魅力にほなりません。
そもそも、人間に対する本当の愛が薄く、販売戦略にばかり長けているノウハウ本からは、何も学べないというのが私の実感です。
捨てる技術だけを盗めばいいという考え方もあるでしょう。でも、それならば、幸福だとか、魔法だとかいう惹句(じゃっく)を多用するのはやめて、技術だけに特化して語ってもらいたい。
ノウハウだけでは売れないので、読者が飛びつきやすい言葉を本文に散りばめているのでしょうけれど、そうした文章は不快であり、とても最後まで読めたものではありません。
筆子さんの「1週間で8割捨てる技術」は、そうした、あざとい断捨離本の真逆に位置する「誠実の書」なのです。
本当に読者に役立つノウハウだけを、読者をくすぐる何の脚色もなしに、真実一路とでも表したい「真っすぐな語り口」で提供しています。
「1週間で8割捨てる技術」が魅力的である2つの理由
1)読者に役立つノウハウだけを厳選して提供している。
2)不器用とも思える誠実な語り口に「まっすぐな著者の人間性」が感じ取れ、好感を持てる。
以上の理由から、有名な断捨離系のノウハウ本を広告につられて読むよりも、ぜひ、筆子さんの「愚直なまでに誠実な本」を手に手に取っていただきたいのです。
こうした誠心誠意、読者のためになりたいと念じている作者の書籍こそ、売れてほしいと願っているのは私だけでしょうか。
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